【後】説明書きのない石棺2012年04月30日 21:26

(2012年1月7日:Napoli)

ナポリという街は、飛行機から鉄道へ、鉄道から船へという乗り換えをしたことが何度かあるものの、街の観光をしたのは今回が初めてだった。
今回、ナポリを訪ねようと思った最大の理由は国立考古学博物館の存在。だが、この博物館が誇るギリシャ・ローマ時代の大理石彫刻たちにはあまり興味がなく、その時代の所蔵品の中で観たいと思ったのはアレキサンダー大王が描かれたモザイク画くらい。

私にとっての最大のお目当ては、シチリア大伯ルッジェーロ1世の石棺であった(写真)。
ルッジェーロは、ロベルト・ギスカルドの弟として、片腕として、ともに中世の南イタリアを征服し、ロベルトの死後はその遺産を引き継ぎ、シチリア王国の礎を築いた英雄である。

ところが、この石棺を見つけるのに四苦八苦し、これこそがルッジェーロの石棺だと確信するまでに非常に時間がかかった。
1階に多数の石棺が並べられていたのだが、この石棺については全く説明書きがなかったのである。
この石棺は、ルッジェーロ1世の本拠地であったミレートの街から発掘され、わざわざナポリに運ばれて、この博物館に展示されたものである。
だから、博物館に行き、順路通りに歩いていれば、いつかはこの石棺が観られるに違いないと思っていた。しかし、一通り館内を観て廻ったのだが、それらしき展示物に出会うことなく出口に到着してしまった。

その後、見学のための順路とは外れたところ、中庭を巡る通路に多数の石棺があることに気づき、そちらに移動。
ところが、説明書きのある石棺を全部チェックしたのだが、ルッジェーロのものが見あたらない。
この石棺に関しては、以前、何かの書籍か資料に掲載されていた写真を観たことがあった。その記憶を頼りに、通路を何周もしながら一つ一つの石棺を観て廻った。

その結果、どうもコレに違いないとの結論に達し、シャッターを切ったのがこの写真である。
まあこの博物館に展示されている名品の数々に比べると、「作品」としての価値は微妙である。だから、"大物"の石棺とはいえ、これを端っこに追いやり、説明すら付けないというのも理解できなくはない。
けれど、こんな扱いがされるのなら、ミレートの博物館に戻してあげてはどうかと思ってしまう。

* ミレートを訪ねた5年前の記事は↓
http://ike.asablo.jp/blog/2006/08/28/501678