〔後日談〕イスラエルの出入国2013年01月07日 00:48


イスラエルの出入国審査は厳しく、とくに出国の際には念入りの荷物検査やら審査やら調査やら尋問が行われ、非常に時間がかかると言われている。
時期的にも、11月にガザ地区から1500発ものロケット弾がイスラエル側に発射され、イスラエル空軍がガザ地区への空爆を行ったばかり。日本の旅行会社は、12月出発のイスラエル・ツアーをすべて催行中止としていた。
停戦合意が成立後も死傷者が出るイスラエル側の発砲事件があり、国連総会でパレスチナがオブザーバー国家として承認され、それに対する報復的な措置として、イスラエルがパレスチナ自治政府への税収送金を停止したり、東エルサレムに新たな住宅地建設を決定するなど、戦闘再開の引き金になりそうなニュースが続いていた。

私の場合、ツアー客ではない一人旅である。それだけで怪しい。
しかも、フォーサーズのカメラを2台、タブレッドPC、スマートフォンのほか、それらの充電装置やら有線LANを無線化する装置など、やたら電子機器を持ち込んでいる。パスポートにはイタリア、タイ、香港、台湾の出入国スタンプが入り乱れている。
どうも、いろいろと質問されそうなネタが多すぎるような気がしていた。

というわけで、とくに出国には、かなり時間がかかるに違いないと覚悟し、頭の中で回答をあれこれ考えながら空港に向かった。
ところが、入国も出国も、審査自体はあっけないほどの短時間で終わってしまった。これは、たまたまなのかも知れない。けれど、それはそれで、これからイスラエル行きを計画している方には参考になる情報だと思うので、ここに書いておこうと思う。

<入国:2012年12月22日(土)>

ローマ発のアリタリア便で午後1時半頃にテルアビブのベン・グリオン空港に到着。
入国審査のカウンターでの待ち時間はなし。

質問(英語)は、どの便で来たのか、渡航の目的は何か、どこから来たのか、その日の宿泊場所はどこか、イスラエルでの滞在期間はどのくらいか。
時間にして2分程度だったと思う。一応英語なのだが、独特の言い回し、訛りが入るため、意味がわからず、何度かこちらから質問の意味を確認したりした。それがなければ1分もかからないような内容だった。

その際、パスポートにスタンプが押され、それとは別に、スタンプが押された紙を渡された。その紙は、飛行機に預けた荷物を受け取る部屋に入る際、待ち構えていた係官に回収された。

ちなみに、イスラエルの出入国スタンプが押されているパスポートでは、周辺のアラブ諸国への入国ができないため、「ノー・スタンプ」と叫ぶ必要があるらしい。私はむしろ、記念にスタンプが欲しかったため、そのままポンと押してもらった。

<出国:2012年12月28日(金)>

14:50発のテルアビブ(ベン・グリオン空港)発ローマ行きのアリタリアを利用した。
アリタリアのEチケットの記載によると、テルアビブ発の場合のチェックイン〆切時刻はフライト予定時刻の「3時間」前とされていた。ローマ発東京行きの場合だと1時間前で足りるわけで、その〆切時間は異常。私は念のため、鉄道で4時間前に到着した。

チェックインカウンターに辿りつく前に、保安検査を受ける必要がある(これが難関だという噂だった)。
検査の場所は、出発便別に、A~Dのブロックに分けられていた。ローマ行きアリタリア便はAのブロックに分類されており、そちらに移動。

1 立ち話式の質問

で、Aブロックの入り口の行列に並ぶ。そこには女性の係官が3人ほどいて、並んでいる乗客たちに順に声をかけ、パスポートをチェックしながら質問をしていた。
私の列の一番前の方にいたヨーロッパからのグループ旅行者たちは、3組に分かれ、輪になって3人の係官から質問を受けており、かなり時間がかかっている様子だった。
私の直前には、黒い衣装のムスリム女性(たぶんイラン人)が並んでいた。順番がまわってきたのだが、英語がわからない様子。すると、係官が彼女にわかる言語で質問事項が書かれたボードを持ってきた。質問事項に指を差しながら、にこやかに質問し、そのムスリム女性が首を振りながら答える、というやりとりで終了。そのムスリム女性は1分程度であっさり通過。

どうみても観光客という感じのヨーロッパ人グループの検査に時間がかかり、一見してムスリムとわかる黒衣装の個人旅行者があっさり通過という状況が不思議に思えた。

さて私の番だが、係官はパスポートをざっとめくりながら、いくつか質問。
質問内容は、フライトナンバー、どこへ行くのか、荷物は誰がパックしたのか、友人からプレゼントを受け取ってないか、ナイフやハサミを荷物に入れてないか、というもの。
質問を受けるまで列に並んでいた時間は10分ほど、質問時間は1分半くらい。

2 機械に荷物を通す
チェックインカウンターで預ける予定の荷物を巨大な検査機械に通した。
機内持ち込み予定のリュックも機械に通そうとしたら、それは不要と言われ、リュックは背負ったまま通過。
機械から出てきた荷物を受け取り、その場所にいた軍服姿のお姉さんに、次はどこへ行けばいいのか聞いたところ、チェックインカウンターへ行けとのことだった。

3 荷物検査のカウンター
巨大な機械の次には、荷物を開けて検査するためのカウンターがあって、何人かはそこで検査を受けていた。
どうも、機械による検査で、そのカウンターでの検査の要否を振り分けをしているらしい。私はセーフだったため、このカウンターはスルー。おそらくは、そこで引っかかってしまうと、荷物を開けられ、執拗な質問が行われるものと思われる。

4 チェックイン
その後、アリタリアのチェックインカウンターでチェックインとなった。
フライト3時間前にならないと開かなかった。それまで、大勢の乗客がカウンター前で待っていた。私は4時間前に空港入りしていたが、そこには先客が20人ほどもいた。

5 手荷物検査
機内持ち込みの荷物の検査を受ける。これは成田空港と同じ感じ。X線の機械に荷物を通し、乗客たちは金属探知機の「門」をくぐる。
行列に並んで待っている時間は長かかったけれど、検査自体はすぐに終わった。カメラ2台、タブレットPC等々についても、とくに質問を受けることはなかった。

6 出国審査
それまで、あまりにあっさり通過が多かったため、ここであれこれ質問されるのではないかと構えていたが、結局、どこへ行くのかと聞かれただけ。私が答えを言い終わらないうちにパスポートにスタンプがポンと押され、ここもあっさり通過。

7 ゲートへ
出国審査を通過し、もう終わりかと思っていたら、出発ゲートのある建物に入る手前で、パスポートと搭乗券のチェックがあ。ただし、見せるだけで通過。

行列に並んでいる時間や、アリタリアのチェックイン前の待ち時間があったため、空港到着から1時間半ほどはかかったものの、審査時の質問応対時間は全部合わせても5分くらいだろうと思う。
こうして無事に出国審査を終え、余裕で免税店での買い物や食事ができた。
写真は、空港内でとった昼食、鶏の手羽のグリルと生ビールである。皿の中央は"Teriyaki"ソース。

〔後〕エルサレムへの道2013年01月09日 02:47

(2012年12月22日)

テルアビブのベン・グリオン空港から、まず向かったのはエルサレム。
シェルートまたはセルヴィスと呼ばれている乗り合いタクシーを利用した。
空港の建物を出ると、看板もあり、運転手がすぐに声をかけてもくれ、エルサレム行きのシェルートはすぐにわかった。10人くらいの乗客が乗れる座席があって(車両自体はタクシーというよりはミニバスといった方がいい)、ほぼ満席にならないと出発しないシステムらしく、出発までは20分ほど待たされた。
やがて外国人観光客や地元の人たちで満席になり、出発。高速道路として整備された国道を走ってエルサレムに向かった。

このルートは、少しだけパレスチナ自治区である西岸を横切ることになる。
外務省が公表している「危険情報」には4段階のランクがあるが、エルサレムやテルアビブは最低ランクの「十分注意してください」になっている。
しかし、西岸やガザ地区あたりは2ランク上がって「渡航の是非を検討してください」になる。ただし、エルサレムとテルアビブを結ぶこの幹線道路だけは除外されていて、最低ランク。
したがって、写真に写っている道路部分は「十分注意してください」だが、それ以外の風景は、一応は「渡航の是非を検討してください」の対象地域ということになるようだ。

エルサレムの市街地に入って行くと、ユダヤの正装をして何かを唱和しながら歩く男性の一団(30名くらい)が前方に見え、それを見たアラブ人運転手が舌打ちした。やがてその一団に近づくと、2人ほどがタクシーの正面に立ち、何かを訴え始める。当然、タクシーは前に進めない。
すぐに警官が来て「交通整理」をしてくれたが、少しの間、その一団にタクシーが取り囲まれるような格好になったため、一時はどうなるかと緊張した。どのような性格の一団だったのか、なぜタクシーの進行を妨げようとしたのかについては今もよくわからない。シャバト(安息日)の最中だったから、何かしらの宗教的な意味があったのかも知れないが。

その後、タクシーは乗客たちをそれぞれの目的地ごとに降ろしながら進む。
私も乗るときに行き先のホテル名を言っておいたところ、ちゃんとそこまで連れて行ってくれた。
料金は62シュケルで、およそ1500円ほど。運転手に20シュケル札4枚(計80シュケル)を渡したところ、きっちりとお釣りをくれた。