奈良の思わぬ伏兵に沈んだ夜2007年12月03日 19:46


なんか11月はずっと忙しかったし、なんか勢いでデジカメも新調しちゃったし、一段落ついたら「そうだ、京都へ行こう」と思い立ったのが2週間ほど前。
だが、この紅葉シーズンの週末、2週間前の「そうだ」という安易な発想は甘かった。京都の宿はどこも予約がとれない。いや、全く空いてなかったわけじゃない。一泊2万円以上の宿と、2000円以下の宿だけが空いていた(そんなことでは、私は泊まれないわけです)。

「じゃあ、大津に泊まって、魚のおいしいお気に入りの居酒屋へ行こう」と大津のホテルの空きを探したところ、大津もダメだった。「そんなに京都に来てほしくないなら、奈良にしてやる!」と、今度は奈良中心部の宿を探してみたものの、こちらも予約でいっぱい。かろうじて、奈良から数駅手前のところで、一泊5000円のビジネスホテルがみつかった。
というわけで、さっそくこのビジネスホテルの予約を入れ、この週末は奈良へ出かけた。
奈良到着初日は、新調したデジカメで鹿さんを撮ったり、紅葉した樹木を撮ったりしながら、楽しい一日を過ごした。

そして夕刻、近鉄奈良駅から電車に乗って少し戻り、そのビジネスホテルにチェックイン。
それでもって、まずたまげたのは、玄関に入ってすぐの「土足禁止」の注意書き。フロントで説明を受けたところ、玄関に靴箱があるので、自分の部屋番号のところに靴を入れ、スリッパに履き替えて部屋まで行ってくれとのこと。

さて、その靴箱のところに行ってみると、そこには何と私の名前が大書してあった。
旅館で「歓迎 ○○様ご一行」とか大書してあるのはよく見かけるが、これはまた粋なはからい。何だか昔の下宿屋みたいだ。と、苦笑しつつも、これはブログのネタに・・・、いや旅の思い出になるわと、ちょっぴり嬉しかった。

だが、部屋に入ってみて、またびっくり。キッチンが付いている!
もっとも、キッチン付きだからといって困ることは何もない。ただ、それを見て、10年前に抱えていた仕事のことを思い出してしまったのである。このキッチンの風景は、どこかで見たことがあるような・・・。

それはバブル経済崩壊直後のこと、マンションとホテルの開発業者が倒産し、私はその後始末をやるはめになった。その倒産したカイシャが開発した、とある物件は、賃貸マンションとホテルの複合施設で、マンション部分もホテル部分も同じ設計になっていた。要するに、ホテル部分にもキッチンが付いていたのである。仕事でそういった部屋に何度も出入りしていたから、その風景が目に焼き付いていたのである。

この奈良のビジネスホテルは、その倒産したカイシャとは全く関係ないものの、客室が似たような設計になっていて、ホテルにも賃貸マンションにもできるようになっていた。おまけに、1階部分の事務所の風情が似ているし、コインランドリーのスペースがやけに大きくとってあったりするところも似ている。
そういった附属施設の処理のことで、かつて四苦八苦していた自分を思い出す。

あのとき、後始末をつけるまで何年かかったのだろう。その仕事から解放されるまで、日々、死闘であったから、何とも苦い思い出である。
部屋のキッチンの周りで、死闘の想い出ばかりが駆けめぐる。
そうやって、古都奈良の夜は過ぎて行くのだった。

合掌