【後】何も載っていないピザ2012年06月14日 19:29

(2012年1月10日:Bovino)

Bovinoの街はとても小さい。夕食がまともにとれそうな店は、一軒くらいだった。
でも、その唯一のトラットリアは、幸いにして外観上は私好みの店だった。

開店直後、その店に入ってみると、まだ、店の奥の方の明かりが点いていなかった。おそらくはその晩の最初の客は私だったに違いない。
厨房から顔を出してくれたおばさんの案内で席に着くと、豪華なシャンデリアとテレビのスイッチが入れられた。

やがて、なかなかのイケメンが席にやってきた(F1ドライバーのフェルナンド・アロンソに似ている)。
何を飲みますか、何を食べますか・・・というご質問。イタリアの田舎でよくある店の儀式が始まった。紙に書いたメニューがなく、店にある食材を前提に、”打ち合わせ”をするというパターンである。

店側のスタンスは、一応、客の希望を聴くというものなのだが、それなりにお勧めがあり、希望通りにならないものもあり、打ち合わせをすればするほど、店側の術中にはまって行くのが常である。
とくに語学力に乏しい私などは、結局は言われた通りにするほかはなく、いっそのこと、最初からテキトーにやってくれと言ってしまった方がよかったのかも知れない。

かくして、前菜として生ハムとフレッシュチーズ、キノコと野菜の炒め、それと、第一の皿としてソーセージ入りのオレッキエッテが出てきた。
これらが私の真の希望に沿ったものかはさておき、アロンソ(勝手に名前を付けさせてもらった)が言っていたとおりのものが出てきた。いろいろ”打ち合わせ”をした結果、このようなものを注文することになったのである。

だが、この写真の皿が出てきたときは、「一体これは何?」と思った。
「ピザを頼んだ覚えはないのだが」という疑問、「いや待て、これはピザと言えるのか」という疑問、さらに「お代は幾らなのか、パンのかわりだからコペルト代に含まれるのか」という疑問等々が、すでにワインに含まれる魅惑の化学物質によって、かなり思考力の鈍った私の頭の中を駆け巡る。

そうは言っても、イタリア語で繰り広げられた”打ち合わせ”の内容を正確には理解していない。だから、テーブルに出されたものは、すべて責任をもって食すほかはない。
それで食ってみて思う。これはうまい。少々オイルとハーブがかかってはいるものの、限りなく”プレーン”に近いピザ。生地のうまさ、素のうまさがダイレクトに来る。

この日、風邪をひいてしまった私は、あまり食欲がなくてセコンド(メイン)の料理は遠慮させてもらった。しかも、ワインも飲まなかった。
だが、もし万が一、次回があるとすれば、この店でもう一度、このピザを思い切り食べてみたい。たぶん、ワインとの相性は抜群だと思われるのである。

コメント

_ 駄菓子 ― 2012年06月23日 16:35

きのうこれ見ました!
カンポバッソのトラットリーアで。プリーモの筆頭にpizza e minestraなんて書いてある不思議な料理があったので頼んでみると、これと野菜をぐちゃぐちゃにまぜたものなんだとか。
あとで原形をみせてもらったら、まさしくこれでしたよ。
ちなみに、モリーゼはもう南部ですね。アブルッツォは中部という感じでしたが。

_ ike ― 2012年06月23日 18:54

どうやら、これもpizzaなんですね。
カンポバッソとは距離的にも近いですし、同じものがこの辺りの山岳地帯で食されてるのかも。

それにしても、ずいぶんパリから離れましたね。

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