城の崎にて2010年09月18日 00:03

 
その日、餘部鉄橋を通り過ぎた後は、宿を予約してあった城崎温泉をひたすら目差した。
空を見上げると、あちこちで積乱雲が発達中。夕立は避けられそうもなく、予定していた海岸沿いのルートをやめて、近道と思われた山越えのルートをとる。
しかし、積乱雲の発達は思っていたより早かった。山道を走っている途中でポツポツと雨が降り出す。だが少し走ると止み、また走ると降り出す。どうも、山道を走っている途中で、積乱雲と追いかけっこをしているような感じになってしまったのである。

何とか山道を走り抜け、宿に辿り着いて部屋で荷物を解いていると、いきなり外でドワァァァーという音がした。障子を開けて外をみてみると、まさにバケツをひっくり返したような土砂降り。
雷の閃光と、キリキリという雷鳴と地響きがひっきりなしで、久しぶりにみた途方もない夕立であった。眼下の小川も、みるみるうちに濁流になって行く。
「ほう、この地方では、こんなもの凄い夕立があるんだぁ~」とおもしろがっていたが、それが実は、記録的な集中豪雨であったことを後で知った。

宿の方の話によると、私のすぐ後に到着した宿泊客が、駐車場から玄関までのほんの数メートルを歩いただけで、完全にずぶ濡れになってしまったとのこと。山道であの豪雨に襲われたら、まともにバイクを走らせることはできなかったことだろう。空を小まめに観察しておいて良かったと思う。

激しかった夕立も、宿の晩ご飯が済んだ頃にはすっかり上がっていた。
少し散策に出てみると、城崎温泉には、古い温泉街の雰囲気が色濃く残っていた。かなり歩き回っても、コンビニが見あたらない。ファストフード店などもってのほかである。夜の娯楽は射的とスマートボール。パチンコにはインテルもAMDもNECも入ってません。

泊まった宿には、シングルベッドのある和洋折衷の部屋があり、その部屋を利用させてもらった。温泉の方は、大浴場の施設はなく、複数の小さな家族風呂を自由に利用して下さいという最近流行のシステム。
私は、一人で3つの家族風呂を次々と独占利用させてもらったが、中でも印象深かったのが「少年時代」と題された風呂だった。
なんと、風呂場の半分ほどに畳が敷いてあった。濡れたままの体で畳に横になってみたり、畳の上に思い切りお湯をぶっかけたりできるという趣向である。
料理とか接客に関しては、何となくギクシャクした感じで、洗練されていないのだが、こういう温泉宿の新しいかたちは大歓迎である。

あ、それで『城の崎にて』という志賀直哉の小説だけれど・・・、散策の途中、ゆかりのある温泉宿の説明書きを読んではじめて、そんな小説を昔読んだことを思い出した。でも、30年以上も前のことで、何も覚えてない。

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プーリア

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