シッラ2006年08月28日 07:03

もう10年も前のこと。プーリア州の情報を求めて、東京・青山にあるイタリアの観光局に行ったとき、棚に山積みになっていた立派なパンフレットが目に留まった。
ビニールのカバーが付いていて、きれいな写真が多い。しかも折りたたんだ大きな地図まで付いている。それがカラブリアの役所がつくった観光パンフだった。
そのときは行くことはなかろうと思いつつも、あまりにきれいな写真が多いので、一冊もらって帰った。
もっとも、このパンフレットをみて出かける奴は誰一人としておるまい、と思っていた。だってカラブリアだもの。山と海しかないし、パンフレットにもきれいな街並みなんかはいっさい写ってない。あれから10年、あのパンフレットで釣れた日本人は何人くらいいたのだろう。
ただ、そのパンフレットの中で、当時から唯一心ひかれたのがシッラの街だった。というか、まともな街並みが写ってたのはシッラだけだった。

海岸線ぎりぎりのところに家々が建てられているのがシッラの街。
上の写真の裏側には、さらにギリギリに家が建ち並ぶキアナレーア地区がある。こっちは、ちょっとした高波で、簡単に2階くらいまで床上浸水するのではないかと思うくらいギリギリ。ヴェネチアは堤防で囲まれた潟にあるけれど、ここは外海に直結している。かなりヤバイと思う。
家が建ち並ぶすぐ裏には一本の小道があって、この地区の散策は楽しかった。家と家の隙間から、海がすぐそこに見える。

もっともここは、ビーチ目当ての海水浴客がごったがえすような街。例によって、カメラをぶら下げてウロウロしているような観光客は私くらいなものだった。
予約なしでビーチに近いホテルが確保できたのは、日帰り客が多いせいだろうか。

もし万が一に"次回"があるとすれば、できれば、シーズンオフにキアナレーア地区にあるB&Bに泊まってみたい(連絡先をメモってきた。結構やる気満々)。
ああ、でもシーズンオフだとB&Bはやってないのかな。

奇跡の5ユーロ2006年08月28日 20:01


実は、シッラの街に入ってすぐ、ちょっとばかりイヤな事があった。

ホテルで駐車場の場所を聞いたら、200mほど離れたトンネルのところだという。それで、さっそく停めに行ったところ、トンネルの入り口に木の柵がしてあった。
あまり駐車場の雰囲気ではなく、入り口にビーチパラソルを広げ、その下の椅子に座っていた老人に「ホテルの駐車場はここ?」と聞いてみた。すると「はあ、駐車場??」というご返事。「ホテルの駐車場知りませんか?」と聞いてみても首を横に振るばかり。

そこで少し手前のいかにもホテルの駐車場という雰囲気の場所があったため、そちらに停めてみた。すると今度は、バールの敷地内だったようで、バールの人が出てきて、ここではなくホテルの駐車場はトンネルだと仰る。いったいどうなってるのか。
ということは、さっきの見張り風の老人は何も知らなかったということだろうか。結局、トンネルまでまた戻って、木の柵を自分でどけ、トンネル内に車を停めた。

で、木の柵を戻してホテルに戻ろうとしたら、さっきの老人が口を開いた。
「お金払ったのか?」・・って、何だって? あんたさっき駐車場なんか知らんと言ってたろ!

ホテルの駐車場なんじゃないの? 今晩まで5ユーロだ。 いやいや明日出発だから、明日まででいくら? 今日の午後で5ユーロ。 あなたに払うの?ホテルじゃなくて。 今晩は5ユーロ。
と、すったもんだしたが、結局、次の日に車が出せることだけを確認し、5ユーロ払ってきた。まあ1日分の料金としては相場だし、老人が入り口を見張っていたことには違いなく、彼が首からぶらさげた鞄は料金の入れるためのものらしかったからだ。
ちなみに、老人が首から下の体を動かしたのは、5ユーロを受け取ったときのみ。面倒な外国人とのコミュニケーションを拒絶しつつ、必要最小限度の労力だけで済まそうという、観光地にときおり出没する典型的な食わせ者であった。

次の日の朝、ホテルのフロントで例の駐車場は開いているかと聞いてみたら、たぶんまだ閉まってるので、鍵を貸すから自分で開けてくれとのことだった。
そして、トンネルの入り口の扉を開けていると、慌ててやってきましたという感じのおじさんが現れた。私が外した錠前を渡してくれというので、彼に渡した。

するとおじさん、財布を取り出しながら「お金払いました?」と仰る。
えっ? また?
今度はいくらかになるのやらと思いつつ、「昨日払いました」と返事する。
それを聞いたおじさん曰く"That's not good."

そして彼の手には5ユーロが! 戻ってきました、5ユーロ。
どんな事情なのかはさておき、"奇跡の5ユーロ"と言うほかなし。

それと、この5ユーロのおかげで、シッラの街の印象がかなり違うものになったことは確か。

住民に放棄された街2006年08月28日 21:11

ペンテダッティーロの街のことを知ったのは、前に書いたカラブリアの観光パンフレットの写真からだった。
といっても、その写真はあまりにも小さく、免許証用の証明写真ほどの大きさしかなかった。しかし、そのインパクトは抜群だった。
何もそんなところに住まなくても、と思わせる、奇岩にへばりついたような街。映画『エボリ』のロケ地になったクラコも凄いところだったけれど、ペンテダッティーロも凄そうだ。これは観に行かなくては!

たぶん、こんな所に好んで出かける日本人は私の知る限り2人だけである。
そして、1人は車を使わないはずだし、確かもう1人の方は、カラブリアの南端辺りりまでは来てないはず。きっと、私が1番乗りだと思っていた。
しかし、日本を出発する前に、車を使わないはずの1人の方のブログで、"バスで妙なところに出かけた"という記事を読んだ記憶がよみがえった。「ひょっとして・・・」と確かめたところ、やっぱり先客がいた。私が赴くところ、必ず"彼"の足跡あり。残念!

で、行ってみたところ、意外なことに、観光客がぞろぞろと散歩していた(クラコは立ち入り禁止だったが、ここは廃墟の散策ができる)。
ここは放棄された街であるため、住民はなくほとんどの建物は廃墟になっている。だが今は役所の事務所らしきものがあり、電気も水も来ている。ペンタデッティーロで行われる映画フェスティバルや祭りのポスターが貼られ、街の修復工事が進められていた。
おそらく数年後には立派な観光地になるはず。マテーラのサッシのように、やがて住民が住むようになり、ホテルなんかもできるんじゃないだろうか。

カットーリカしかありませんが2006年08月28日 22:15

写真はスティーロの街にある"カットーリカ"。

"こんな教会のどこがいいのか"と言われるとそれまでだが、カラブリアの南端(イタリア半島のつま先)あたりで、たぶん最も重要な建築物。ビザンチン時代の建築物がそのままの姿で残っているのは珍しく、その意味でも世界遺産クラスと言っていい(したがいまして、このカットーリカに関する限り、一部の物好きだけが行くところではありません。ちなみに駄菓子さんも観に来てますが、別の人も大勢来てます。たぶん。)

それと、街の誇りは”カンパネッラ”。広場には銅像が建ち、旧市街には生誕を記念するパネルもある。この街の近くで生まれたとかいう超有名人カンパネッラ!・・・、って誰?

と、忘れかけていたけど、カンパネッラ著『ガリレオの弁明』がちくまの文庫になってました(日本で文庫版で売られてるような立派な本を書いた人が、ここで生まれてるわけですね)。そういえば私、何年か前に読んだこともあります。忘れかけててすいません、カンパネッラさん。

ともあれ、カットーリカを観てしまうと何もすることがないので、かなり昼寝、夕寝をしました。